ラクロス親子キャンプ in TOCHIGIを開催

栃木にラクロスの聖地を。

#アップサイクルTOCHIGIでは、多様なパートナーと鉄道から始まる新しい旅行やライフスタイルを共創しています。そのパートナーのひとつに、公益社団法人日本ラクロス協会があります。日本での競技人口が年々増えてきているラクロスですが、まだまだ地域との結びつきは弱く、聖地と呼ばれる場所がありません。

そこで、公益社団法人日本ラクロス協会と#アップサイクル TOCHIGIの共創プロジェクトでは、栃木県をラクロスの聖地にしようという共創プロジェクトを始動しています。その一環として、2022年8月6日、7日に、ラクロス協会関係者22名が参加する視察ツアーを実施し、ラクロスと栃木県との相性を探りました。

北米生まれの地上最速の格闘球技。

ラクロスは、もともと北米の先住民達が、大自然の中で神との繋がりを深める儀式の一環として行っていたスポーツです。それに加え、部族間の争いを平和的解決するための手段にも使われていたと伝えられています。17世紀にフランス系の移民が発見しスポーツ化。使用されていた道具が、僧侶が持つ杖(Crosse)に似ていたことから「La-Crosse」と呼ばれるようになりました。

男女共に、1チーム10人制で、15分×4クォーターで点を取り合います。使用されるボールは、直径わずか6cm。早いシュートは時速150キロを超えるとも言われています。男子ラクロスでは、ボディコンタクトが許容されていることから、地上最速の格闘球技とも呼ばれています。

スポーツの街としての高いポテンシャルを秘めている栃木県・日光市。

ラクロスの起源をたどると、広大な大自然の中を駆け回る北米の先住民たちの姿が浮かびます。歴史や精神を理解すると、聖地となる候補地も限られてきます。それは、大自然が近くにありながら、スポーツ設備が整っている地域です。

四季折々に表情を変える大小さまざまな山々や、清らかな水をたたえる河川など、栃木県は首都圏近郊で貴重になりつつある豊かな自然に囲まれています。
また、東京都内からのアクセスもよく、宿泊施設が整っており、大会を開催した際の団体受け入れにも対応できるなど、そのポテンシャルは非常に魅力的です。

今回ツアーを実施した日光市も、男体山や女峰山の麓に位置し、広大や山々に囲まれ、街のそばを一級河川の鬼怒川が流れ、美しい渓谷や渓流もあります。そして、市内には陸上競技場・サッカー兼ホッケー場(クレー・芝)・人工芝競技場・体育館・スケートリンク・クロスカントリーコース、宿泊棟を有する今市青少年スポーツセンターがあり、練習や合宿を行える環境が整っています。自然に囲まれてラクロスに向き合う。そんな、ラクロス起源の地との共通性から、ツアーの開催地に選定されました。

大自然の中で身体を動かし、五感が解放される体験を。

8月6日からの1泊2日のツアーは、天然芝のフィールドでのラクロスからスタート。日本代表のヘッドコーチを務める大久保宜浩さんと、元日本代表の清家悟さんから指導を受け、パスやラインドリルと呼ばれる走りながらパスとキャッチを繰り返すメニューなどに取り組みました。メニューが終わった後は、経験者向けにビハインドパス(背面パス)のミニ講座が開かれるなど、初心者と経験者の両者が楽しめるメニューでした。

練習後はツアーのメインプログラムのひとつである、キャニオニングへ。キャニオニングは自然を満喫しながら川の流れとともに渓谷を下るアクティビティです。練習後のリフレッシュでありながら、自然に身をゆだねることでラクロスの起源をより理解することができる。そんな絶好の機会となりました。
日光鬼怒川NAOC(ナオック)に移動し、水の力によってできた天然のウォータースライダーを滑ったり、大きな天然プールで泳いだり、滝つぼへ豪快に飛び込んだりと体ひとつで行う究極の川遊びを体験。街中のプールでは感じることのできない不思議な感覚に包まれました。

キャニオニングの後は、宿泊先の「旅籠 鬼怒川宿」へ。夕食はBBQ。お肉と新鮮な野菜で、ラクロスとキャニオニングで疲れた体の回復に必要な栄養を補給しました。夕食後は、ツアーのもうひとつのメインプログラムであるキャンプファイヤーに参加。キャンプファイヤーも、ラクロスと同じく、起源はアメリカ大陸の先住民が継承してきた文化だと言われています。ネイティブ・アメリカンと呼ばれる彼らの、火の神様に対する儀式が、キャンプファイヤーの根幹にあります。

キャンプファイヤー場では、キャンプ協会の方々から、木のくべ方と伝統的な着火の作法を教わり、参加者全員で実践しました。誓いの言葉と共に、東西南北の4方向から着けられた炎はたくましく燃え上がり、消えるまでのひと時を語らないながら過ごしました。

ラクロスは、複雑な社会を生き抜く、柔軟な人間性を育むスポーツです。

一般社団法人 日本ラクロス協会 理事長
佐々木裕介さん

他のスポーツとラクロスの大きな違いは、ルールの変更が数年から数十年に一度あり、進化途中のスポーツであるということです。そのルール変更に対応していくために選手たちは、自然と柔軟な思考と高い適応能力を身につけます。この2つの力は、競技外でも役立てることができ、ラクロス経験者は、会社や組織で活躍している人が多いと言われています。これからはより多様な時代に突入します。未来を担う世代がラクロスに触れ、どんな環境でも活躍できる力を養ってくれることを願います。そのためにも、栃木県をラクロスの聖地とし、ラクロスを広めていければと思っています。

ラクロスを通して文化や自然に触れ、視野を広げる。そんな体験ができる聖地にしたい。

ただ練習に打ち込むだけではなく、ラクロスの起源を心と体で理解できる場所へ。日本各地には、スポーツの合宿場や巨大な練習施設は数多くありますが、日本ラクロス協会×#アップサイクル TOCHIGIプロジェクトでは、それらと一線を画すラクロスの聖地を目指します。

フィールドで、川の中で、人と人の間で。今回の視察ツアーでは、参加者だけではなく、運営側もたくさんのヒントを見つけることができました。1度きりのツアーではなく、本物の「聖地」をつくりあげるための実証実験は、これからも続きます。

―取材・執筆:山脇耕太
―撮影:千原光一