インバウンドサミット2022に登壇

日光・奥日光におけるトランスフォーマティブ・トラベルの実現

コロナ禍で先が見えなくなった時代「今だからこそできるインバウンド観光対策」を模索する「インバウンドサミット2022」が2022年7月2日に開催されました。#アップサイクル TOCHIGIからは「日本の観光を変革する『トランスフォーマティブ・トラベル』の可能性」というテーマで参加しました。

欧米人の富裕層を中心に関心が高まっている「トランスフォーマティブ・トラベル」。これは、ひとことで言えば「意図的に旅立ち、自己啓発につなぐ新しい旅のあり方、または世界との関わり方に挑む旅」のことです。

今回は、日光・奥日光におけるトランスフォーマティブ・トラベルの実現に向け、各分野のプロフェッショナルに議論を交えてもらいました。「旅の前後まで考えられたエクスペリエンスデザイン」「自然・スピリチュアルなどの素材を活かした観光資源の創出」など、この先のインバウンドを見据えた方向性が見えてきました。

所有ファーストから共創ファーストの時代へ

渡邉 賢一
XPJP代表取締役 価値デザイナー

「意味・共感の時代」と表現される現代。かつては「ヒト・モノ・カネ・情報」など、所有することが重視されていましたが、現在は「共感・意味・評価・関係性」など、共創することに重きが置かれるようになっています。世界的にも自然や社会との共生への関心が高まっており、SBNR率(無宗教型スピリチュアル層)はアメリカで18%、EUで34.7%にも上っているのです。

このような変化の中、旅のあり方も変わっています。かつて旅とは「レジャーを楽しむツーリズム」でした。その後は「興味関心を満たすためのトラベル」が流行し、そして今、新たに「自己探求や気づきを得ることを目的にした、トランスフォーマティブ・ジャーニー」の時代が来ているのです。

トランスフォーマティブ・トラベルでは、旅前・旅後の意味付けが重要に

ニコラ・ブゼ
Transformative Japan エクスペリエンス・デザイナー

トランスフォーマティブ・トラベルにおけるキーワードは、「目標」「挑戦」「成長」です。旅ナカだけでなく、旅の前後も重要であることがポイントです。

旅マエには「なぜ旅行するのか」という「目標」を立てます。それは、ただ楽しむためではなく、例えば「新たな自然との関係性を見つけたい」といったもの。旅ナカは、異国で不慣れなことに「挑戦」します。これらを乗り越えた旅後に得られるのが「成長」ですね。

このような過程を踏むことで、楽しみながらも、有意義かつ感動や共生、自己実現をもたらす「トランスフォーマティブ・トラベル」を体験できるのです。

日本が持つ多様な素材を「感動を生む体験」に昇華する

ダコスタ・レティシア
JapanExperience エクスペリエンス・マネージャ

日本はトランスフォーマティブ・トラベルに非常に適した土地です。なぜかというと、日本には「豊かな自然」「異国感」「伝統と近代化のギャップ」「異文化から生まれるアウトオブコンフォートゾーン」「自然崇拝などの神秘」などの素材が豊富にあるからです。

トランスフォーマティブ・トラベルの実現には、旅行中の各体験で大きな感動を与えることが重要です。ただ新しい文化を体験するのではなく、そこに深い意義を感じることで、より記憶に残ったり、気づきを得られたりします。

このような旅行体験を提供することで、その地へ訪問するリピーターが生まれやすくなったり、より付加価値の高い経験を提供する可能性が広がります。

豊かな自然やスピリチュアルなものが残る土地・日光

青柳 健司
東武鉄道 観光事業推進部長

東武グループでは、インバウンド向けに東武鉄道沿線の観光資源を開発する取り組みをしています。

中でも欧米豪からの観光客の割合が高い日光・奥日光は、トランスフォーマティブな要素を数多く持った土地だと考えています。森や湿原、湖などをはじめとした数々の自然のほか、神橋や社寺、根強く残る山岳信仰などスピリチュアルな資源も多く存在します。

インバウンド受け入れのための取り組みとしては、リッツカールトン・日光の開業やNikko MaaSの導入、新型特急N100系の導入のほか、環境に配慮したモビリティの推進などを実施しています。今後も、新たな旅の形にマッチし、新たな体験を産む観光資源を開発していきたいと思います。