アップサイクル鹿沼-未来共創ダイアログ

「#アップサイクルTOCHIGIプロジェクト」として、東武日光線の特急停車駅である新鹿沼駅が所在し、2024年に関東初のスノーピーク直営キャンプフィールドが新設される栃木県鹿沼市を舞台に、公民連携による地方再生を担う「鹿沼銀座エリアリノベーション共同体」およびUR都市機構、東武鉄道と共に鹿沼の未来について語り合う「アップサイクル鹿沼-未来共創ダイアログ」が2022年9月29日、出会いの森キャンプ場(栃木県鹿沼市)にて実施されました。

新鹿沼駅に集合したメンバーはレンタサイクル「okurabike」のe-bikeを利用して宿場町鹿沼の街中を移動し、町人文化の結晶「彫刻屋台」や今宮神社を見学、途中コーヒースタンド「日光珈琲朱雀」でエスプレッソを堪能しました。その後里山を巡り、自転車だからこそ楽しめる景色と空気を味わいながら会場へ到着。

関東随一の清流と言われる大芦川と荒井川の合流地点に位置する出会いの森キャンプ場にはスノーピークのタープやチェアをセッティング。鹿沼市副市長をはじめ、地方再生、まちづくり、駅前からの二次交通、キャンプ場開発、鉄道など各分野のプロフェッショナルをお迎えして、徐々に夕焼け色に染まる里山を背景に焚き火を囲みながらのディスカッションが行われました。

【登壇者】

福田義一氏 鹿沼市副市長

信田啓輔氏 UR都市機構 東日本都市再生本部 まちづくり支援部まちづくり支援課 担当課長

風間教司氏  DANNAVISION/日光珈琲 代表取締役

鷹羽知子氏  大倉ホンダ販売/ookurabike 代表取締役

岡本拓実氏  スノーピーク鹿沼直営キャンプ場開発担当 地方創生コンサルティング

池田直人氏  東武鉄道 鉄道事業本部 営業統括部長

ファシリテーター 渡邉賢一氏 #アップサイクルTOCHIGI総合プロデューサー 内閣府CJPFディレクター/XPJP代表取締役

鹿沼銀座エリアリノベーション共同体の可能性

鹿沼市とUR都市機構は2021年12月「まちづくりに関する連携協定」を締結。中心市街地の銀座通りに活動拠点「kanuma commons(カヌマ・コモンズ)」が開設され、これからの鹿沼を共に創る人に出会えるLocal Hubとしての役割に期待が高まります。運営は「鹿沼銀座エリアリノベーション共同体」が行うことで民間主導の実行力と行政サイドの決断力が相まり、スピード感のあるスタートとなりました。

首都圏から2時間圏内というアクセスの良さ。週末のリフレッシュで訪れるのにも「ちょうどいい距離感×鹿沼の文化・人・自然」がリピーターを生み、いつしか観光の枠を越えて暮らすように楽しむライフスタイルの延長線になり、すでに移住される方も出てきています。

鉄道×キャンプ×自転車の相性

2023年7月15日に運行を開始する新型特急スペーシア Xの車両エクステリアデザインには、伝統工芸の鹿沼組子がモチーフとして取り入れられ、沿線の街と街を結ぶ約30年振りの新型車両となります。鉄道の旅は駅前からの二次交通が課題となりますが、e-bikeの登場により移動距離が飛躍的に広がり駅前から街中、里山へ、自転車が地域と人をつないでくれます。

元々、鹿沼市には民間も含めて7〜8箇所ものキャンプ場があり、川遊びや釣りスポットとして有名な大芦川、懐かしい田園風景、標高1,300メートルの高原といった多彩な自然環境に恵まれています。

2024年開業のスノーピーク直営キャンプ場では、キャンプサイトだけでなく温浴施設や飲食店、食品加工所、広場などが整備される計画です。チェアリングやポタリングでアウトドア体験を身近に感じてもらえる環境が整い、現在人口の約7%がキャンパーですが、残りの93%をどのように来てもらうかの課題にも寄り添います。

従来は車に荷物を載せ、プライベートな場所を貸し切って籠もるイメージのあったキャンプですが鹿沼の街中と自然の近さを生かした鉄道とe-bikeによる「手ぶらでキャンプ」はキャンプ体験の裾野を広げるチャンスになりそうです。

金曜の夜に浅草を出発して「手ぶらでソロキャントレイン」など面白いアイデアも創発。そしてお酒を楽しめるのも電車でキャンプの醍醐味です。

近代化を支えた鉄道の歴史が一巡し、鉄道の新たな価値や役割が生まれているのかもしれません。

駅前モビリティベース、充電ステーションの整備、プレイヤーの育成など具体的課題も見つかりました。

鹿沼銀座通りの活動拠点「kanuma commons(カヌマ・コモンズ)」には、飲食などの小商いにチャレンジする「kanuma Stand」、まちづくりに関わる仲間が集う会員制スペース「Kanuma Base」も用意され、トライアル期間を経て巣立ち、応援者や育成者になれるようなヒト、モノ、コト循環型の仕組みづくりも求められています。

移住候補者が飛び入り参加!

鹿沼には「旅行以上、移住未満」の中間領域を楽しめるポテンシャルがあるという話題の途中、4月からUR都市機構のメンバーとなった有馬さんが実はすっかり鹿沼ファンでソロキャンにもハマり、移住も考えていることが判明。飛び入り参加していただき、魅力を語っていただきました。

「自然豊かだけど人の気配がある、街中から自然が近くにあって、来ると心が落ち着きます。東京から遠すぎない安心感もあります」

ワーケーションにも適した「ちょうどいい距離感」は、東京と鹿沼の二拠点ライフも充実させてくれます。移動中に特急列車の快適空間で仕事ができる「ワーケーショントレイン」というアイデアも。

人間性の回復

パチパチと薪の爆ぜる音に五感が研ぎ澄まされ炎の揺らめきを見つめていると心が潤い、人間性の回復へとつながります。

焚き火を囲みながらのひととき。不思議と今回のディスカッションでは「マーケティング」や「ブランディング」「KPI」「コストパフォーマンス」といった言葉が一度も登場せず、地域と人、人と人、駅前と街中と里山、のように隔たりを無くし掛け算で展開する話しが多く語られました。

鹿沼のアンリロさんによる地元野菜たっぷり至福のケータリングディナーをいただき、一本締めならぬ「鹿沼締め」でお開きとなりました。

夜はスノーピークのキャンプギアを使ったソロキャンプ組も。アップサイクル鹿沼-共創の取り組みは、ここから力強く広がっていきます。

鹿沼から始まる沿線地域の活性化

集まった方々は行政、事業者の立場を超えて栃木県鹿沼市の未来についてビジョンを語り合う機会となりました。

今後、新型特急スペーシア Xの開業を控え、特急が停まる新鹿沼駅を起点とした沿線地域の活性化が期待されます。今回の取り組みを通じて、栃木県、鹿沼市、東武鉄道、旅行会社、地域事業者が垣根を超えて未来に向けた構想を共有し合い、新しい鹿沼の地域ブランディングを作ってゆく機会となりました。